
明らかにADHD。でも、ずっと放置されていたJ君(小3男子)
発達障害の一つに『ADHD』(注意欠陥・多動症)というものがあります。原因は不明ですが、生まれ持った特徴として、不注意さや衝動性・多動性の高さがあります。「忘れ物が多い、言われたことをすぐ忘れる」とか「授業中、自分の席にじっと座っていられない、すぐ立ち歩きをする」という特徴や「怒るとすぐに手が出る、暴力をふるう、順番を待てない」などといった行動面で目立つことが多いです。小学校で見掛けたJ君は明らかにそれでした。ほぼ毎日同じようにヤンチャな級友たちとつかみ合いの、時には教科書を投げつける、顔面を殴って鼻血を出すなどのトラブルがあり、宿題をはじめとした提出物を期日に出したことはなく、授業中は自席にいる時間の方が少ないくらいでした。ただ、担任の先生にこれまでの事情をうかがうと、発達障害の専門医への相談は一度もないとのことでした。というのも、何度も前の担任教諭やスクールカウンセラーが保護者と話し合いの場を設け、専門医療機関への受診を勧めたそうでしたが保護者は納得せず、先生方の中では「あの家は言っても無駄」と半ば諦められてしまっている状態でした…。
そこで私は、カウンセラーから見て気になったJ君の様子を挙げ、落ち着いて勉強に取り組めないことでJ君自身も困っているのかも知れないこと、もしそうなら力になりたいといった内容をお手紙にして、保護者宛にお出ししました。ほとんどダメ元の気持ちでしたが、意外にもすぐに母から連絡があり、面接に来室されました。家庭でもJ君の養育について、父母間で考えが違うのだと話し、父は職人で、子どもたちには「男は勉強なんでできなくても元気があればいい」「やられたら必ず倍にしてやり返せ!」と言い聞かせているのだそうです。また、『病院』や『医者』に対して不信感があり、「行っても無駄。金を盗られるだけ」と発達障害の通院には断固反対されるのだと語ってくれました。
ただ、今回母が私のところに相談に来てくれたのは、私からの手紙を読み、J君に学校の話を聞いてみたところ、「皆と同じことが出来ない。オレなんて死んだ方がいい」と言ってJ君が涙ぐんでいる姿を見て、どうにかしなきゃ!と強く思ったのだと話してくれました。その後、母に専門医療機関の探し方や選び方、多動さや衝動性は服薬によって安静が促せること、まだ今からでも学習の遅れ(J君は九九がほとんど言えませんでした)を挽回できることなど、アドバイスをさせて頂き、さらに学校での様子をカウンセラーからの所見として情報提供書にまとめ、初診時に担当医に提出し、診療に役立てて頂きました。
J君は服薬を開始し、一月後くらいから徐々に自席にいる時間が増え、三ヶ月後には授業中おしゃべりをする他の児童をJ君が静かにするようにと注意していると担任の先生からうかがいました。また、後日母から、病院受診するという母の気迫に押されたのか、父は「そんなに言うなら行って来ればいいじゃん…」と案外簡単に折れたそうで、「こんなことならもっと早く行けばよかったです」と笑いながら話してくれました。