『ひとの立場になって』心に寄り添うということ ④

前回「『ひとの立場になって』心に寄り添うということ ③」の続き

被害女児の心の寄り添うこと
 今回の事件で最も丁寧に扱われるべきは、被害を受けた女子児童であることは確かです。もしかすると、心のケアには数年から数十年が掛かるかも知れません…。

たとえば、子どもに虐待を行う親は、自分自身が幼少期に親から虐待を受けた経験がある場合が多く、そのツラさや苦しさを知っているはずなのに、自分が親の立場になった時に同じような虐待行為を子どもに行ってしまうという現象があります。心理学では『虐待の世代間連鎖』といいます。また、いじめを行う児童生徒の多くが、過去に自分自身がいじめや暴力にさらされた経験がある場合が少なくありません。

つまり、暴力などの被害にさらされたという経験は、自尊心を大きく傷付け、不安や恐怖、恥や自己否定感といった負の感情に繋がりやすく、それは自分自身に向けられた場合に自傷行為や自己破壊的な行動に繋がったり、他者に向けられた場合にはいじめや虐待行為といった他者への攻撃となって表出したりすることが起こります。

女児は、『急性ストレス反応』という診断を受けていますが、さいわい現時点で医療に繋がっているため、専門的なケアを受けることが出来ていると考えられます。短期的な目標としては、現在の精神症状の沈静化や寛解(症状が一時的もしくは永続的に軽快、消失している状態)を目指し、長期的には前述した自尊感情の回復が重要といえます。
しかし、今後男性への恐怖心や性に関する事柄への抵抗感、特に初潮や第二次性徴が始まる十代前半の時期(中学~高校)以降、男女の身長差や体形の差異が明確になり、恐怖の体験を不意に思い出してしまうフラッシュバックが起きやすくなることも想定し、長期的な心のケアが大切です。

以前、私は発達障害の患者さんと40年近く面接を継続した精神科医の事例を聞いたことがあります。その医師が話していた、「発達の問題に付き添うということは、そのクライアントの生きている事実に付き添うことだ」という言葉が今も胸に残っています。
被害を受けた女児が、今後どのような人生を歩むのかは私には知りようはありません。ですが、女児が成長し、この苦難を乗り越えて自身の人生を歩んで行く、その歩みを支えてくれる専門医やカウンセラーと出会えることを願っています。

「『ひとの立場になって』心に寄り添うということ」 終わり

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