2022年のWBCの日本対アメリカの決勝戦の前に、大谷選手がチームメイトに語った「憧(あこが)れるのはやめましょう」から始まる激励は、日本チーム全員を大いに鼓舞し、劇的な勝利への一因となったと思います。
今回は、大谷選手の名言に則(のっと)った訳ではありませんが、ご家庭の皆さんが普段の子どもとの関わりにおいて、頭の片隅に置いておいてほしい、少し踏み込んだ心理学のお話をさせて頂きます。
1970年代、アメリカで次のような実験が行われました…。
すると、次第に看守役は指示された以上に囚人に厳しく制限を加えて、違反者に罰を与えるようになり、囚人役も徐々に態度や言動が荒々しく、看守に対して反抗的・暴力的になって行った。
この実験はリアルになり過ぎていて危険と判断され、参加者の家族や弁護士などによって、この実験は6日目で中止された…。
これは、アメリカの心理学者ジンバルドーによる、有名な『スタンフォード監獄実験』です。この研究により、多くの知見が得られましたが、その中でも特に重要な事の一つが、『人は与えられた役割(ラベル、レッテル)に合うように変わってしまうという働きが起こる』ことでした。これは『ラベリング効果』と呼ばれています。
例えば、極端な例を挙げると、周りから「アイツは不良だ」というレッテルを貼られることで、言われた人は、次第に自分でも『不良』と思い込むようになり、『不良』がするような荒い言動や乱暴な振る舞いを、より一層するようになってしまうということです。恐ろしいのは、スタンフォード監獄実験で、なんでもない普通の人たちが、たった数日でより『看守』らしく、より『囚人』らしくなったように、繰り返し言われたり、周囲にそうした扱いをされたりすることで、誰でも『役割』に沿うように考え方や行動が変わってしまう可能性があるということです…。
『自分が言われたら嫌なことは、子どもに言わない』が基本です!
振り返ってみて、私自身も小中学生の頃、「勉強しないバカ」「でれ助が」とよく言われていましたが、幸いそれを言うのは父親だけだったので、自分でもそう思い込んでしまうラベリング効果は起こらなかったと思います。
しかし、例えばこれが家庭で、周りの家族に日常的に「お前は〇〇に似てだらしない!」とか「オレに似てお前はどうせバカなんだから」などの酷い言葉を浴びせられ続けたら、むしろ、より一層“そうように”なってしまう危険性を高めていると考えられます。
知らず知らずとはいえ、自分は子どもに酷い言葉を使ってしまっていないか、これを機に御一考してみてはいかがでしょうか。