
毎日、夕方になると寝込むLさん(30代女性)
私がまだカウンセラーの資格を取る前の大学生の時、精神科病院に実習に行っていた際にLさんと出会いました。実習生が珍しかったのか、Lさんの方から私に声を掛けてくれました。Lさんは専業主婦でしたが、最近、毎日夕方前の時間になると体調が悪くなり、家事もできなくなって寝込んでしまうのだそうです。内科医院で検査をしても原因が分からず、しばらく休養するようにと医師に勧められ、精神科病院に短期間入院することになったのだと話してくれました。「昼間は元気なんだけど、夕方前になると寝込んじゃうのよね」と力なく笑うのでした。
当時、私はまだカウンセリングの仕方や知識などほとんどない状態でしたが、夕方というのが何かキーポイントに思えて、Lさんに〈夕方になると家では何をされるのですか?〉と尋ねてみました。Lさんは「えーっと、洗濯物を取り込んだり、お買い物に行ったりとか…」と思い出しながら、ふと「夕飯を作るんです。でも…」と言って下を向き、数秒間、黙って何かを考え込みました。私は聴いてはいけないことを言ってしまったかなと内心ひどく焦ったのですが、次の瞬間、Lさんは顔を上げて次のような話をしてくれました。
結婚を機に、夫の両親と同居するようになり、家族全員の食事をLさんが作るようになったそうです。しかし、義母はLさんの料理の味付けが気に入らないのか、作ったものをほとんど食べてくれず、毎日夕方前に食材を買いに行く時に、「どんな料理を作ったら義母は食べてくれるのか」と考えるのがツラかったのだそうです。「そうか…。わたし、義母との関係に悩んでいたんですね!」と、原因不明だった夕方の体調不良の切っ掛けが、義母との関係不和だったのではないかとLさんの中で結びついたのだと話してくれました。それまで、どんよりしたような力無い表情だったLさんが、パッと雲の切れ間から太陽の光がさすように明るい表情になったことが、とても印象的でした。
Lさんとお会いして話したのはその日だけでしたが、ただ話をしていただけで、何も特別なことをした訳ではないのに、Lさん自身が自分の気持ちに気付いたことでパッと表情が明るく変わる瞬間を目にし、私は自分の学んできた心理学が他者のために活かせる道として、カウンセラーを志す切っ掛けとなった出会いでした。