
切っ掛けは「友達のマネ」。リストカットを始めたGさん(中1女子)
夏休み明け、担任の先生よりお話がありました。養護教諭がGさんの腕に傷があるのを見掛け、担任から保護者(母)に連絡したところ、夏休みのはじめ頃、Gさんが自宅で自傷行為をしているのを見つけたとのことでした。その際本人を強く叱り、もう二度とやらないという約束をさせたから「もう大丈夫です」とのことでした。ただ、養護教諭からは「見掛けた傷痕はまだ最近のものに見えた」ともうかがっていました…。
そこで、私から教職員の方々に、多くの場合、自傷行為は繰り返される可能性があり、『強く叱る』『やめるように説得する』といった行為はむしろ自傷行為の潜在化(隠れて行う可能性)を高めるため、危険であることをお伝えし、母が言うように「これでもう終わり」とは考えずに、Gさんとの面接の機会を持たせて頂くようにお願いしました。
はじめにお会いした時、Gさんとは「母には絶対に言わない」という約束のもとで、話をうかがうことができました。やはり自傷は続けていて、母に見つからないように家ではトイレやお風呂場、時には学校のトイレに刃物を持ち込んでいるとのことでした。そもそもの自傷の切っ掛けは友人の女の子で、その子に誘われてやってみたものの、友人は1回でやめてしまったのに、何となく自分は繰り返し続けてしまっていると話してくれました。その頃、Gさんの生活環境は、母とGさんと妹の3人家族で、帰宅後は母の代わりに夕食作りや洗濯などのお手伝いがあり、一方で英会話や学習塾などの習い事が週5日、毎日学校と塾の宿題があって寝るのは0時を過ぎ、学校では周りの友人たちのトラブルの仲裁役を頼まれたり、急に仲間外れにされたりと、気苦労が絶えない状況にありました。
Gさんとは毎週1回の面接を継続しました。はじめは2,3日に一度の自傷のペースが、次第に週一度、数か月に一度と徐々に間隔が空いて行きました。「他の子に知られたくないから」と制服が夏服の間はさらに自制心が働いたようでした。面接を半年ほど続けた頃、Gさんの同意を得て、母とも情報共有し、学習塾以外の習い事はやめさせてもらいました。友人関係ももっと話しやすく、一緒にいて落ち着けるおとなしいタイプの女子たちと仲良くするようになった頃、自傷を始めた切っ掛けを振り返り、「たぶん、わたしは他の子とは違うことができるんだって、見せたかったんですよ」と語ってくれました。中1の学年末、最後の面接の時には、今は母の勧める大学に進むか、好きなイラストの描き方が学べる美術系の学校に進むか進路で迷ってるんだと笑顔で話してくれました。