『もう、どうしようもない』は本当に真実ですか? “諦め”の心理学!

さて、今回は少しディープなテーマについての心理学の研究をご紹介させて頂きます。昨今いろいろな場面で耳にする、『パワハラ等の種々のハラスメント行為』や『ブラック企業(ブラック○○)』等々、様々な社会的問題がなかなか根絶されない背景には、人や動物にはある状況下になると「もう逃げられないから諦めよう」と思い込んでしまう脳のメカニズムがあります。

逃げ出せない状況に置かれた動物がどういった反応を示すのかを調べるため、アメリカの心理学者セリグマン,Mは次のような実験を行いました。

まず、AとBの2つのグループにイヌたちを分け、Aのグループのイヌにはボタンを押すと床の電流が止まることを学習させ、Bのグループのイヌにはその学習をさせず、電流が流れても逃げられない状況を経験させます。次に、床に微弱な電流が流れるように作られた2つのケージを隣り合わせに置き、その間を飛び越えて行き来できるような低い柵で仕切り、中にイヌを入れます。すると、Aのグループのイヌたちは床に電流が流れると仕切りを飛び越えて逃げましたが、Bのグループで「電流が流れても逃げられない」と学習してしまったイヌたちは、床に電流が流れてもその場から逃げようとはせず、電気ショックを受け続ける状態となりました。

つまり、Bのグループのイヌたちは、仕切りを飛び越えれば電流から逃れることが出来たのに、抵抗をせず、『逃げることを諦めてしまった』と考えられます。

上記のような実験を通し、セリグマンは、人や動物には回避できない状況に置かれると、抵抗や逃げることを諦めてしまう働きがあり、『学習性無力感』と呼びました。つまり、実験ではBのグループのイヌたちは「自分は無力で抵抗は無駄だと学習させられてしまった」ということです。これは大変恐ろしいメカニズムと言えます。

『学習性無力感』からの回復は、まず自分の状態を自覚することから!

『学習性無力感』の状態に陥ると、人は客観的な状況分析や正常な判断力を失い、自身の人間性や権利をないがしろにされても抵抗や避難という選択肢を考えることが出来ず、自暴自棄のような“諦め”が心を支配してしまいます。この状態は、実は『いじめ』の被害児童生徒も同様です。状況改善のための第一歩は、まずは『学習性無力感』に陥っている自分を自覚することです。「何もできない」「どうしようもない」「自分は無力だ」といった間違った学習を修正するためには、信頼できる他者の力を借りることも大切です。

2019年にWEBマンガ総選挙で1位に選ばれ、2023年10月にTVアニメ化された『新しい上司はど天然』というアニメでは、パワハラ上司の下で心身を壊してしまった主人公の青年が、新しい職場のど天然上司と出会い、癒されて行く、というお仕事コメディが大好評だったそうです。
少し大人向けのアニメですが、もしかすると職場で同じような体験をされた方が多くいて、世の中の共感を集めたのかも知れません。
自分ひとりの力ではどうにもならない時には、他者に頼れる(SOSを出せる)ことも大切な自己防衛力と言えます。

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